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2009年12月

アウトテイク

自分内縛りや全体のバランスなどなど、様々な理由から「題詠blog2009」に投稿しなかった歌をアップします。
こっちのほうがよかったかもという歌もありますが、それはそれ。アルバム未収録曲みたいな感じで捉えてください。
では、どうぞ。


003:助
朝の日が差しこむようなふりをして補助線を引く春の裸身に

004:ひだまり
原子力発電によるひだまりが恋人たちを一つに溶かす

007:ランチ
今日もまたお昼休みのタモリから森田へ戻る遅めのランチ

009:ふわふわ
エロビデオ返しに行こうふわふわと自転車をこぐ夜桜の道

010:街
鳩料理食べてこの街一番の正直者の座を奪われる
街中をゼリーのように波打たすベティ・ブープの悩ましき腰

013:カタカナ
カタカナのあだ名だけしか知らないが会えばハグするような関係

015:型
理科教師原子模型を組み立てる色とりどりの恍惚のなか

016:Uターン
ゴミ箱をなぎ倒しつつUターン カーチェイスには片づけが要る

020:貧
川向こう灯る貧しい家並みの明かりのほうが赤いと思う

022:職
歯車になりたくないと言う彼を職業差別と叱る歯車

023:シャツ
汚れてもなおも真白きものとしてジェーン・バーキンのランニングシャツ

025:氷
夏期講習終り食べたねかき氷みどりの水をびちゃびちゃ混ぜて
外套にきらめく氷粒を見てお客の橇の早さを思う

026:コンビニ
いざというときは近所のコンビニで香典袋やコンドーム買う

029:くしゃくしゃ
磯辺にて岩を返せばくしゃくしゃと脚を動かす命の数多

030:牛
コンビーフ缶を開けば絵の牛の切り離された四肢のさびしさ
暮れてゆく遠くの山を見ていれば動きはじめる 牛だったのか

032:世界
どこまでも世界はまだらユニバーサル映画の地球ゆるく回れど

033:冠
クレバスを滑り落ちてく犬橇のように喉(のみど)へ消える銀冠

036:意図
簡潔に意図を述べよと官吏来てカフカの指はインクをこする

037:藤
庭にいるのか自らが庭なのかわからなくなる藤枝静男
『アメリカの鱒釣り』藤本和子訳 栞は春の水の匂いに

038:→
紳士用トイレを示す→をたどって風の丘のまで来たが

039:広
台風が房総沖を進むころ広口瓶に揺れる梅の実

041:越
炎天に臨界点を越えてゆくくるうくくるう鳩くる広場

042:クリック
カーソルが点滅してる夜だからクリックをしに家へおいでよ

044:わさび
わさびとは知らずに食べてしまったか唸るサミュエル・L・ジャクソンは

045:幕
黒幕は父親だった その日から少年の爪噛む癖続く
暗幕の裏側の襞あかあかと鯨の中のピノキオ思う

046:常識
常識をわきまえなさいと言う伯母よ 来月僕と結婚しよう
ウチだけの常識だったと後に知る 見てはいけない炬燵の光

048:逢
逢えないと言われそのまま引き下がるような永世竜王じゃなし

051:言い訳
ひと通り天体ショーも見終えたしさあ言い訳を聞かせてもらおう

052:縄
笛の音に合わせて天へ伸びてゆく縄をのぼればはるのゆうぐれ

053:妊娠
見下ろせば海が妊娠してる夜、ああポニョ波が、波が高いよ

055:式
教会のガラスを割って彼が来る 式次第にはない展開だ

056:アドレス
アドレスを暖炉にくべる ありがとうみんなのおかげであたたまったよ

063:ゆらり
日曜もすでに夕方テレビにはアンガールズがゆらりと並ぶ

064:宮
両の手で砂場を掘れば滲む水 宮崎勤死刑執行

066:角
スミタさんかカクタさんかがわからない人の名刺がデスクの角に

068:秋刀魚
女神問うお前の落とした秋刀魚とはぎんのさんまかきんのさんまか

070:CD
機を織る姿を見せぬ鶴のよに暗いところで回るCD
妹が使ったあとの車にはレミオロメンのCD残る

071:痩
痩せこけた顎に手を当て写真機のレンズ見返す芥川氏は

073:マスク
どうせならキスしたまんま死にたいな防毒マスクせーので外し

074:肩
植物のように尖った肩をして青年になる途中の君は

075:おまけ
ミニチュアの家で暮らそういつの日かお菓子のおまけ集めて住もう

077:屑
宝石を扱う手つき おが屑の箱に眠れる幼虫を置く

078:アンコール
アンコール津波のように広がってやがて世界に立つ救世主

079:恥
整備中エスカレーターステップのすべてめくられ恥部見るごとし
「ニンゲンのにおいがする」と森の主 人間であることは恥ずかし

084:河
マドレーヌ紅茶わずかに滴らせ大河小説はじめの雫

085:クリスマス
クリスマスツリーが彼ら狂わせる赤黄赤赤緑黄黄青

087:気分
私たち相対的ね サイエンス気分でボート漕げば夏雲

091:冬
あのビルの群れは大きくなりすぎて冬を越せずに滅びた巨人

094:彼方
自慰終えて徐々に陽物萎む頃はるか彼方に咲くラフレシア

095:卓
あらあらと声出す人もいないのに食卓の壜倒してしまう

098:電気
10月の晴れた朝には見えるというニコラ・テスラの電気帝国

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覚書き 「君と僕」を遠く離れて

ちょっと間があいてしまいましたが、
今回の題詠blogについてあれこれ感じたことをまとめておきたいと思います。

まず、失敗から。
投稿ミスを今になって見つけちゃった。「058:魔法」のお題。
僕は「魔方陣」という言葉を詠み込んだんですが、よく見たら「魔法」じゃないじゃん。
「魔方陣」と「魔法陣」とは別物なんですね。まったく気づかずにスルーしてしまいました。
ということで、前回エントリの「百ならベ」は「魔法失敗Ver.」としておきました。
また、「魔法」を詠み込んだ歌も100首の最後にオマケとして付け加えました。
なんか詰めが甘くてすみません。

では気を取り直して、全体の感想を。
実は、というほどたいした話じゃありませんが、今回、100首作るに当たって、
「一人称も二人称も使わずに詠む」という自分内縛りを設けました。
厳密に言うと二人称はちょっとだけ使ってるんですけど、一人称はゼロのはず。
というのも、投稿されていた歌に「君と僕」の歌が多かったので、
あえて逆を行けば目立つかな、と思ったのがきっかけです。
僕のことを詠んでいても、「僕」とは語り起こさない。
君のことを詠んでいても、「君」とは呼びかけない。
できるだけ「君と僕」から遠く離れて歌を詠む、というようなつもりでした。
つまり、自分の中から沸き上がるものではなく、
「お題」という外的なものから歌を立ち上げるということです。

なので、お題に対するアプローチは、いろいろと悩みました。
せっかくの題詠なので、お題を活かしたいよねなんて思ったりもして。
できるだけ、お題がちゃんと効いている歌にしたいというか。
まあ、「魔法」は失敗しましたが。
あと、お題で歌を作ると、言葉の選び方が説明的になりがちで、その匙加減が難しかった。
僕の根っ子にある理屈っぽさが、ついつい出そうになる。
でもそれって、詩としては、あんまりよろしくないかなあという気もします。
これは、今後の課題かな。

そうやって「君と僕」を遠く離れて詠んでいても、日々歌のことを考えていると、
身の回りのあれやこれやがするするっと入ってくるんですね。
そのときどきの何気ない出来事や友人との会話、観た映画や読んだ本、
ニュースや天気、鼻歌やふと思い出したことなどが、100首の中に紛れ込んでいます。
そういう意味では、やはり2009年の歌ということになるんでしょう。
今年はいろいろと気が滅入ることが多い年でしたが、題詠blog、やってよかった。
そんなことを思う、12月です。

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