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百ならべ または二度目は喜劇

題詠blog2010 全投稿歌

001:春
摩天楼にょきにょき育つモノクロのニュースフィルムに春の息吹よ

002:暇
休暇から戻った人はシュレッダーのボタン押さずにしばらく見てた

003:公園
公園のコンクリートのどうぶつはみんなやさしいのっぺらぼうで

004:疑
Googleを疑う子供たちだけがアクセスできるサイトがあると

005:乗
乗算という語に思う収容所中庭に死屍折り重なるを

006:サイン
狼の波打つ背(せな)の素早さにサインはペンの先から離れ

007:決
長い夏だったな マンガ3巻にわたって続く決勝試合

008:南北
南北を均すローラー現われてぐろうばりずむぐろうばりずむ

009:菜
アスファルトにこぼしてしまう緑黄色野菜一日分のジュースを

010:かけら
レコードのかけらをつなぎ合わせては夜明けの距離を測るDJ

011:青
晴れわたる青島幸男夕暮れる赤塚不二夫 ゆかいなひろば

012:穏
穏やかに緑のほうへ滑り出しやがて夏へと飛び込むトロッコ

013:元気
鳩時計(元気なだけのばかものめ)縊り殺して眠る老優

014:接
紫陽花の斑に腐る封鎖区に予防接種の長き行列

015:ガール
のぼるあわひとつひとつにエレベーターガールいるよな炭酸水を

016:館
ブロンズの肌濡らすため傘を置き彫刻の森美術館へと

017:最近
ねじ山のつぶれかけてる最近は思い出すのに時間がかかる

018:京
東京都千代田区千代田1の1 うすむらさきの羽根をやすめて

019:押
靴跡を草はゆっくり押し戻す 誰にも告げぬ領地を持てり

020:まぐれ
気まぐれにクリックすればびしょ濡れてダウンロードをされる瀑布よ

021:狐
眠りへと落ちる間際のぎんいろの残像として狐の尻尾

022:カレンダー
病室の日々は真白く過ぎてゆく カレンダーの格子を掴む

023:魂
壜詰めにした水死者の魂を書棚に並べディレッタントは

024:相撲
夕立ののち素肌から湯気放ち相撲取りまた少し膨らむ

025:環
かつて都たりし平原(パンパ)にたどり着く いま閉じられる物語の環

026:丸
●●●●はトラックバックできないが伏せ字にすればただの黒丸

027:そわそわ
口づけを交わすがごとくパーティにそわそわと広がりゆく噂

028:陰
陰謀論育つ暗がりガラス器にしらじら揺れるヒヤシンスの根

029:利用
ひさかたのオリオンビール空缶を再利用して家建てる父

030:秤
起きたての郵便局にちらちらと光を載せた銀の秤が

031:SF
未知のものなべて青色 少年はハヤカワSF文庫を選ぶ

032:苦
苦瓜のぶら下がる夜 戦争を知ってる人がまたいなくなる

033:みかん
ほらよっとみかんが描く放物線ほどの距離ある友の親しさ

034:孫
南下する都市伝説の孫コピー 口裂け女駆ける速さに

035:金
プールでのキスはなかったことにして金管楽器眠る教室

036:正義
おおらかな時代であった 怪獣とビルなぎ倒す正義の味方

037:奥
火薬臭放つ男を匿える書棚の奥の隠し扉に

038:空耳
かぐや姫様が己(うぬ)らに所望する空耳アワーで当たるジャンパー

039:怠
人生に飽いた王妃の怠惰さでクロコダイルは泥に寝そべる

040:レンズ
朝(あした)には忘れる夢か コンタクトレンズ小さなあぶくをまとう

041:鉛
新しく星座をつなぐ要領で鉛でできた活字を拾う

042:学者
まどろめる博物学者 遠く聞く系統樹そのさやぐ葉叢を

043:剥
湯剥きしたトマトを残しそのまんまローマへ向かうマストロヤンニ

044:ペット
犬たちと笑顔のための練習を! 『ペット・サウンズ』したたるみどり

045:群
湾岸の開発地区にクレーン群れ核家族三つほどのかたまり

046:じゃんけん
じゃんけんのチョキのかたちでモメるよに議論の仕方からする議論

047:蒸
回り出す蒸気タービン 彼方まで大陸覆う糸は紡がれ

048:来世
来世でもトムはジェリーを追うだろう 意味のない死をくり返すだろう

049:袋
鼻先で夜に触れれば寝袋の外の世界のすべてが秋だ

050:虹
虹色はフロアの隙間まで充ちて少し眠たい手足が踊る

051:番号
IDを示す番号入力しパノプティコンの壁の手触り

052:婆
正直な老婆の選ぶ葛篭よりさらに小さなこのiPad

053:ぽかん
いつになくぽかんとしてる森でしたみんな今朝には冬支度終え

054:戯
誰からも少し離れて立っていた戯曲のト書きみたいな顔で

055:アメリカ
アメリカに虐げられたアメリカの喉の震えをブルーズと呼ぶ

056:枯
枯れ枝を焚火にくべるガンマンの幽霊じみた顔の片側

057:台所
母さんの帰り待たずに眠るよる台所から海があふれる

058:脳
脳味噌のことを脳もて考える脳科学者の髮のもじゃもじゃ

059:病
病院の長い廊下をどこまでも歩く夜更けの浜辺のように

060:漫画
公団に漫画のごとき窓並び4コマ目にて手を振る人よ

061:奴
「主人のため銀器は尿で洗うべし」スウィフト記す奴婢の心得

062:ネクタイ
顔持たぬ五本の喉が並ぶ図にネクタイ結ぶ手順を学ぶ

063:仏
ひんやりと仏間に足の裏ならびまるで葉書のようです かしこ

064:ふたご
中心から少し左にずれて立つかつてはふたごだった青年

065:骨
うしろから腕回すよに肋骨は春の虚ろを抱きしめている

066:雛
蜂起した群衆のごと一斉に床の隅まで散る雛霰

067:匿名
駅前のロータリーへと降る雪よものみなすべて匿名にせよ

068:怒
お怒りはごもっともですと受け止めてあとは権限のない役職

069:島
マネキンにコートの袖を通す日は高島屋から咲く冬薔薇

070:白衣
手品でもするかのように白衣から歯科医の取り出したる歯の模型

071:褪
見上げれば褪せることなき青空のニセモノくさきRGB

072:コップ
ガードレールに座っています 逆さまのコップの中にいる気分です

073:弁
インク壜の沼やペーパーウエイトの丘をめぐりて思弁の旅へ

074:あとがき
船倉の鼠に寄せる友情を航海日誌のあとがきに記す

075:微
この部屋は微熱もつ繭てのひらを春の嵐の窓に押しつけ

076:スーパー
スーパーの試食のあとの爪楊枝みたいに捨てる堅き思想を

077:対
エイリアン対プレデター お互いの体液浴びる愛の行為に

078:指紋
選ぶとはその他すべてを捨てること 指紋に残る朱肉を拭う

079:第
女子だけがどこかに消えて教室のカーテン孕む第二次性徴

080:夜
かぎ裂きやワインの染みを誘うもの喜劇映画の夜会服とは

081:シェフ
遺言の示すレシピに乗っ取ってシェフの火葬は執り行われ

082:弾
シミュレーション画面緑に輝いて博士の愛した原子爆弾

083:孤独
若者の孤独の痛み中年の孤独の哀れ 二度目は喜劇

084:千
「千摺り」と漢字で書けば儀式めき一年三六五摺り

085:訛
雪国で育った人の靴音のかすかな訛りのぼる階(きざはし)

086:水たまり
ひかる水たまり一枚、また一枚割りつつ過ぎる重きキャタピラ

087:麗
麗しき唐突さにて舞踏家は棒切れとなり風に倒れる

088:マニキュア
判を捺す箇所はこちらとさす指のマニキュアを見て兆す尿意よ

089:泡
Twitter泡立つ速さ野兎を見つけてはまたすぐ見失う

090:恐怖
恐怖する少女の顔のおぞましく楳図かずおの描く豊麗線

091:旅
「ひさしぶりだねこんなになんにもしない日は」雨の旅館で急須を揺らし

092:烈
ひび割れた声轟かす街宣車車列に「烈」の文字のイガイガ

093:全部
なんかもう全部ダメだわ とか言ってチンパンジーはそれきり黙る

094:底
地上での一世(ひとよ)をかけて鉱物の花を育てる地底王国

095:黒
黒猫のフィリックスをも塗りつぶすカートゥーンにはスミベタの夜

096:交差
ゴーストップゴーストップ交差点に無数の霊が吹き寄せられる

097:換
天井の高き空港 照明の交換をする者は天使か

098:腕
たくましき理想のかたち両腕を小沢健二は大きく開く

099:イコール
宇宙ってどうなってるの? イコールの先どこまでも連なれる3…

100:福
朝立ちの回数が減り冥福を祈る回数増える四十路よ

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